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今年8月、インド北部メーラトで受験勉強をする警察官の志望者たち=ニューヨーク・タイムズ

These Exams Mean Everything in India. Thieves See a Gold Mine.

 電話が鳴った。実行の時が来たのだ。医師は空港へと急ぎ、何百マイルも離れたインド西部で真夜中に行われるオペレーションに向かった。

 ただ、その任務は人命救助ではなかった。医師が持っていったのは、ドライバー、ペンチ、ナイフ、そして携帯電話。盗みに必要な道具一式だった。彼が狙うのは、公務員の仕事や大学入学をめぐるインドでの熾烈(しれつ)な競争で、金(きん)よりも価値のあるもの、警察官試験の問題用紙だった。

 警察の捜査資料とニューヨーク・タイムズによる主任捜査官へのインタビューによると、医師のシュバム・マンダル容疑者は(インド西部の)アーメダバード到着後、郊外の貨物倉庫に急行し、監視カメラを避けるため、裏口の窓から、箱が積み上げられた部屋に侵入した。警察によると、「機密」と書かれた箱をこじ開け、封筒を取り出したという。

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デリーの公園で公務員試験の勉強をする人たち=ニューヨーク・タイムズ

 彼は携帯電話のカメラで各ページを撮影し、再び封筒を閉じて箱にカギをかけた。その後、数夜にわたって近くの一つ星ホテルに滞在し、印刷所から倉庫に新たな紙が届いたときに、その作業を少なくとも1度は繰り返した。犯行の際は、そのたびに窃盗団の首謀者と目されるラビ・アトリ容疑者を含む3人の男が車で待機していたという。

 アトリ容疑者は、自身を犯罪者であり、ロビン・フッドでもあると考えていた。彼は国立大医学部の入学試験を5回受け、最終的に合格したが、医師にはならなかった。代わりに、他人を助けるために試験問題を盗むようになった。

  • 【注目記事を翻訳】連載「NYTから読み解く世界」

インドでは試験問題を盗み、「顧客」に渡すという驚きの「ビジネス」が成立しています。NYTはその背景にある激しい競争、そして窃盗団を構成する医師らの素顔に迫っていきます。

 彼と仲間たちは、どんなささ…

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